質問箱1ー大学編(一般)
(1) 学生編
Q やっぱりがくせいは可愛いですか?
A 可愛いですよ、そりゃあもう。
Q 大学の先生からみて、この人は社会に出て大丈夫かなという学生さんとかいますか?いるとしたら、どのような学生さんですか?(挨拶ができない、とか)
A 問いかけをしても、うんともすんとも言わず、反応が全くない方をみると、極めて不安になります。社会云々ではなくて、そもそも生きていけるのか、と・・・
Q 大学の先生からみて、Fランクの学生ってどうおもいますか
A その表現自体が好きではないんですよね。まあ、初任校はそんなに学生レベルが高いとは言えない大学でしたが、みんな立派な社会人になっていますし、大学で勉強する内容自体が直接に仕事には役に立たないにしても、そこで学んだモノの考え方は、決して生きていく上で無駄にはならないと思います。それに、少数ながら資格試験などで実績を上げている卒業生もいますし、教え子にオリンピック選手も、メダリストもいます。みんな大事な自分の教え子です。
Q 最近の学生ってメンタル弱すぎません?甘やかされ過ぎでは
A 同業の方でしょうか、そうですねぇ。。言ってはいけないNGワードが多すぎます。配慮すべき事項が多すぎます。飼育箱の中で過保護に育てられた動物を野生に離すような懸念があります。
Q なぜ大学1年生は教員のことを総じて教授と呼んでしまうのでしょうか?
A 内部の組織体制なんて知らないから…いまだに助教を助教授と呼ぶ人が多いでしょう?
Q 大学院は主婦のリカレント教育の場じゃない!というツイートが炎上していますが、先生はどう思われますか?
A 誰にでも学び直し(リカレント)の機会を保障すべきです。私自身、学部生のころはリカレント教育で大学院にやってきていた方々からゼミや授業を通じて多大な刺激を受けました。その後、なぞの文科省の指導で(学部生と院生に一緒の授業を提供することはまかりならん!)そうした交流の機会が失われたことは誠に残念です。いまでも、あのときの文科省の指導は天下の愚策だと思います。
Q 優秀な大学に在籍している学生さんは、大学の難しい勉強を理解し、さらに発展させて社会に還元させていく素地があるということですよね?なのにどうして大学に入ったとたんに勉強をしなくなったり、いい加減な勉強しかしなくなってしまうのでしょうか?本人にとっても社会にとっても勿体ないことだと思います。
A 大学に入るのが難しすぎて、入った途端に燃え尽きてしまうというのが一番だと思います。私自身がそうでした。私の場合は、意欲を無くすというのを超えて、勉強するのが怖くなってしまいました。試験勉強も、一生懸命勉強してもしできなかったらどうしよう…という恐怖ばかりが上回って、本腰を入れることができなくなりました。本当は何かしらの治療が必要だったと思います。
Q 学生時代にもっと勉強しておけばよかったと後悔している30代です。これからどのように過ごしていけば良いでしょうか。
A 私も学生時代にもっと勉強していれば良かったと思うことだらけです。どんな分野にせよ、いつからでも勉強はできますので、着実に少しずつ進めていきましょう。
(2) 授業・試験など
Q 大学の教科書ってなんであんなに高いんですか?
A 需要が少ないからですよ。数が売れなければ単価はどうしても高く設定せざるを得なくなります。
Q 学期が終わった後も、先生に質問ってして良いものでしょうか。
A そりゃあもちろん、質問は一生しても大丈夫です。
Q オフィスアワーって本当に先生に質問しに行っても良いんですか?学生がこない場合先生は何をしているんですか?
A 本当に質問しに来て構いませんよ。ほとんど学生なんて来ないから、ひたすら仕事しています。
Q オンライン授業でも教員の側で不真面目な学生はわかるものなんですか?
A オンデマンド方式だと分かりようがありませんね。リアルタイムでも分かりません。不真面目な態度が当方に伝わらないのは精神衛生上非常に好ましいといえます。
Q なぜ大学は祝日にも授業をするのですか?
A 15週の授業を確保しないといけないからです。特にハッピーマンデーで祝日が月曜に偏るようになってからこの傾向は強まっています。
Q 大学の教養科目ってなんで存在するのですか?専門科目としての法律学を勉強したくて大学に入ったのに、教養科目の単位を取らないといけないなんてめんどくさいです。
A これはまたテンプレ的な質問ですね。大学での学びは、高校までの学習と連続する部分と毛色が異なる部分があり、その両者を接続するものとして教養科目が存在するわけです。まあ、慣らし期間だと思って気楽にやってください(遊び呆けて良いとは言ってない)。本当はもうちょっとじっくりやった方が良いと感じるのですけれどね。
Q なぜ児童、生徒、学生が教員やその授業を評価できると勘違いする人が出てくるのでしょうか。授業は食べログと同じようなものと思われているのでしょうか。
A 学生ならばともかく、児童・生徒に評価させるのは止めておいたほうが良いと思いますね。まあ、自分も今にして思えば担任に酷いことされた時期がありました。ほとんどは素晴らしい先生ばかりでしたが。
Q 先生が試験問題をつくるときに気を付けていることは何ですか?
A 回答者が出題意図を読み取れるようにすることです。一言でいえば、解きやすい問題をつくるように心がけています。
Q 先生たちは決まって「試験問題はまだ作っていません」とおっしゃいますが、これって本当ですか?
A わたしは作成したあとはちゃんと既につくりましたと伝えますよ。ただ、問題の細かい内容はけっこうすぐに忘れます。最近は何を出題したのかもすぐに忘れます。
Q 実際に大学などの定期試験でカンニングする人ってそんざいするんですか
A ごく小数ながら、いるんですよ。摘発の現場に立ち会うと、あんなこと何の得にもならないから止めておきなさいという気分にしかなりません。
Q レポート課題の採点ってどんな感じの流れでしていますか?100人規模の授業とかだと読むだけでも大変そう。
A レポートに関しては、最初にざっと読んで印象で5段階くらいに分類します。その後、細かい基準に照らして分類を上にしたり下にしたり動かしますが、最初の印象が変わることはあまりないですね。100人の授業だと3~4日かかります。
Q 学生が指定した教科書を読まずにネットで調べたことを丸写しして答案やレポートを書いてきたらどうしますか?
A そりゃあサクッと不可にするだけです
Q 今まで先生が見聞きした学生からのクレームで一番あきれたものは何ですか?私が一番びっくりしたのは、「学費を払っているのに単位を落とすな」です。
A 「授業の中では本格的な問題を出すと言っていたのに、実際は授業で扱った判例の知識を問うだけの問題だったので、本格的な問題に備えていた自分は解けなかった、これはひどいので再試験を要求する」
Q 学生に言われて一番ショックだったことは何ですか?
A 「おまえの授業は全体的にわかりにくい」とアンケートに書かれたことですかね。そういうことは○○先生とか△△先生の授業をきいてから言えと。。
Q 「入学よりも卒業を厳しくすべき」との見解があります。日本では順応するでしょうか?
A 卒業を難しくしようとする試みは何度か企てられましたが、そのたびに挫折しました。私立大学の経営陣や学部長が「不可」を大量に出した教員を呼びつけて搾り上げているうちは望み薄でしょう。
Q なぜ体育が必修になっている大学が多いのでしょう?
A 身体の形成も大事な教育だからでしょう。小中高とは異なり運動オンチでも優がもらえます。
Q 大学の事務職員の方々がちょっと怖いです。どうして職員同士で固まって、外部の人を寄せ付けない雰囲気なのでしょうか?
A 私立だと少しは客商売になるのですが、国公立の場合はお役所仕事をさらに悪くしたようなところがありますね。お役所の場合は納税者である住民が厳しく監視して是正が図られるのですが。
(3) 入試など
Q 日本では大学を偏差値や知名度ではなく教員で選ぶというのが定着しないのはどうしてですか?
A 高校のときに専門分野のことをそこまで詳しく調べる手段がないからでしょうね。それに、教員はすぐ移籍してしまうリスクがあります。
Q 日本の大学入試ではなぜあれほど帰国子女が優遇されているのでしょうか?差別ではないのでしょうか?
A 帰国生は帰国生なりの苦労はあると思うのですが、英語ができるというアドバンテージに加えて、入試枠まで設けられているのは少し疑問を感じますね。
Q 社会人から教授を目指すことはできますか?学部卒です。
A できますよ。休職するか退職するかあるいは職場派遣などの方法で修士課程に入って、大学・大学院がどのようなところか体感してみてください。ご自身がこの世界でやっていけそうならば、目指してみて良いと思います。
Q どこの大学にも社会人入試の制度があると思うのですが、利用して入学される方はいらっしゃるのでしょうか?海外では、大学は色々な年代の人がいると聞きますが。
A ありますよ。ロースクールは、わりと様々な年代の方がいます。閉校してしまう本学のローにも、60代の方が何人もいました。
(4) 大学のあり方
Q 先生のように地方国立大学に勤められている先生はやっぱり地元に貢献しようと考えたりされるのでしょうか?
A そうですね、やはり神奈川県には貢献しようと思いますよ。そのために地方国立大学が置かれているのですからね。
Q 現在大学が「就職予備校」とまで呼ばれて学問があまり顧みられない状況にはどう思いますか?
A 就活があるからといって堂々と授業やゼミを欠席するのはやめてほしいですね。一切欠席するなとは言わないが、少しは申し訳なさそうにしてほしい。。
Q 大学っていうのは、閉鎖的ですか?
A どう贔屓目にみても、閉鎖的であるという批判を免れることはできないのが、大学というところです。
Q 大学の先生の研究室って、地震がきたらどうするんですか?
A ねえ、震度5がきた翌朝とかけっこう酷いですよ。
Q 大学の先生の研究室にある机や本棚は先生の私物なんですか?
A 机や本棚は大学の備品です。大学によっては、研究費で購入した書籍も備品類として取り扱うところがあります。
Q 大学の先生はどうしてMacを使う人が多いんですか?先生もMac派ですか?
A いえ私はWindowsです。ただiPhoneやiPadを使っていると、PCも Macにした方が楽かなあという誘惑に駆られます。
Q 大学の先生が大学の先生に質問することってあるんですか?
A そりゃあもちろんありますよ。自分の専門以外は詳しくないですし、最新の学説の傾向も知りたいですし。個人的には学生のときよりも先生同士でよく質問するかもしれません。
Q 若手の研究者で、研究員という肩書きの方を時々見かけるのですが、どういう待遇なんでしょうか?
A 給料はそれなりに貰えるし悪くはないのですが、ほぼ2、3年の任期付きなので、その間に他の就職先を探す必要があります。
Q 教授会って准教授や助教の人も構成員になっているんですか?それとも大学によりけりですか?
A 大学によりけりです。特に助教が入るかは。准教授はほぼ構成員ですが、教授昇任の議題などでは外されます。
Q なぜ大学教員のポストは任期付きが爆発的に増えたのでしょうか?
A どこもおかねに余裕がないからでしょう。
Q 助教は研究にせんねんすべきですよね?
A 助教っていうのも大学によって位置づけが異なるんですよ。
Q 助教とか専任講師を授業や学内業務でこき使う大学って本当に存在するんですか?存在するとしたらブラックすぎませんか?
A 助教も専任講師も立派な常勤職ですから…常勤ポストが得られない方からすると、贅沢な悩みですよ。
Q 大学教員を研究者教員と教育系教員に分けろという話が時々出てきますが、先生はどう思われますか?
A 給料を貰っているのは教育の対価としてだと考えていますからね。少なくとも国公立では授業負担は軽いので、それすらできない方は研究もどうせできないです。
Q 公募が出来レースか完全公募か、どうやって見分けるんですか?
A 外形からは見分けられません。その大学の先生にそれとなく聞いてみる以外にないです。よほど融通のきかない人でなければ、大抵は教えてくれます。
Q 入試以外でめんどくさい学内業務って何ですか?
A 最初から結論が決まっている会議に出席して、あーでもないこーでもないと話し合いをして、不毛な対立と議論の引き延ばしに付き合い、やっと話がまとまったと思ったらでもやっぱりこういうときには困るよねとか話を最初に巻き戻してくる素晴らしい人が現れたりするような業務です。
Q 教育、研究、学内業務それぞれで一番腹の立つことは何ですか?
A 教育においてはやる気のない学生諸君に対して授業すること、研究においては自分の関連業績をまったく参照されないこと、学内業務においては4次元世界よりやってきた同僚から報告書やら試験問題の内容やらについてクレームが入ることです。
Q 業績がない教授って何をしているんですか?というかどうやってそんな教授が誕生するんですか?
A 国の官庁からやってきたり、民間企業からスカウトしたり、宣伝のために有名人を招聘したり、それはもう色々です。
Q 学部長など学内の公職って嫌々やるものなのでしょうか?よく偉い先生が、研究時間より学内ガバナンスや雑務の方が忙しくて文句を言っているので。
A 本当のところ良く分からないんですよね。ちゃんとした先生は嫌々ながらやっていると思いますが、実際のところは、(口ではともかく)嬉々としてやっているように見える先生も少なくないんですよ。
Q すごい研究業績を残している先生はどうやって学内行政から逃げているのでしょうか…?
A タイプは色々ありますが、学内行政って自分からのめり込んでいかなければそこまで沼にはまることはないと思いますよ。
Q 大学の業務のうち、1つだけなくせるとしたら、①オープンキャンパス、②産学連携・地域貢献、③文●省に提出する書類作成のうち、どれを消しますか?
A もうそんなもん、③③③③③③③③③③③③③③③…ですよ。①は自分の志望校を訪ねて高校生が楽しい思い出をつくるきっかけになるなら構いません。②は各自が思う地域貢献をしていけば良いだけの話。行政法は割と貢献できます。
Q 研究はしないのにTwitterで「俺は校務で忙しいんだ!論文なんて書いている暇あるか!研究ばっかりやっている教員には俺の気持ちは分からないんだ!」などと毎日ツイートしている大学教員って何のために存在しているんですか?
A 本当に研究を全然していないのかはわからないのですが、論文って一定期間書かないでいると本当に全く書けなくなっちゃうみたいですよ。あと、博士論文みたいな大論文を書き上げた後も、しばらく空白期間が生まれます。私にとっての2011〜2016年あたりがそれです。書き方を忘れちゃうというか、中小規模の論文の書き方っていうのがあるんですよね。